近日公開

イントロダクション

スタジオジブリの劇場公開作品としては、再上映を除いて2016年9月公開の『レッドタートル ある島の物語』(原作・脚本・監督=マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット/アーティスティック・プロデューサー=高畑勲)以来4年7か月ぶりとなる、『アーヤと魔女』。『ハウルの動く城』(04)のダイアナ・ウィン・ジョーンズによる同名の児童書を、劇場作品では『コクリコ坂から』(11)以来約10年ぶり、最新作ではテレビシリーズ「山賊の娘ローニャ」(14~15)以来6年ぶりとなる宮崎吾朗監督が映像化を果たした。特筆すべきは、スタジオジブリ初のフル3DCGアニメーション作品であること。したたかで、これまでのジブリヒロインと趣を異にする女の子が主人公というのも挑戦なら、その表現方法も挑戦。驚きと興奮で幕を開けながら、ラストには納得の余韻が広がる、スタジオジブリならではの作品が完成した。本作は、2020年6月にカンヌ国際映画祭が発表した公式作品“オフィシャルセレクション2020”の1作に選出され(全56作品で、アニメーション映画は『アーヤと魔女』を含めて4作品)、また、北米をはじめ、ヨーロッパ、中南米、オーストラリアなどで劇場公開が決定するなど、海外でも注目を集めている。

日本ではNHK総合テレビにて2020年12月30日(水)に放送し、その後劇場公開が決定した。ゴールデンウィークにスタジオジブリの映画が公開されるのは久しぶりのこと。どんな深刻な状況も、笑いに変える力というものはある。したたかだけど賢くて、誰も不幸にしないヒロイン・アーヤの生き抜く強さを、今の時代にこそ映画館でご覧頂きたい。

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企画の成り立ち

スタジオジブリで「アーヤと魔女」という原作に最初に出会い、映像化の企画を考えたのは、宮﨑駿監督。しかし、すでに新作『君たちはどう生きるか』の準備に入っていたため、自身の制作は断念。白羽の矢が立ったのが宮崎吾朗監督だった。原作の面白さと、そのとき自身が考えていた現代の子どもたちのあり方から、監督を承諾。また、セルルック(手描きのセル画スタイルに見えるCGアニメーション)で制作した「山賊の娘ローニャ」を経て、次は3DCGに挑戦したいと思っていたさ中、本作は3DCGに向いているという予感もあり、制作に動き出した。

原作はダイアナ・ウィン・ジョーンズ

原作は、スタジオジブリで映画化された『ハウルの動く城』で知られるダイアナ・ウィン・ジョーンズの同名小説。著者のダイアナはイギリスを代表するファンタジー作家で、“ファンタジーの女王”とも呼ばれている。日本では2012年に出版された「アーヤと魔女」は、その前年に他界したダイアナの生前に刊行された最後の作品。翻訳はこれまでも著者の作品を多数手掛けてきた田中薫子。挿絵はダイアナが生前「世界中の挿絵画家の中で彼女の絵が一番好き」と語ったイラストレーター・佐竹美保。ダイアナの作品では「魔法使いハウルと火の悪魔」も手掛けている。原作の原題は「EARWIG AND THE WITCH」。EARWIG(=ハサミムシ)には人に取り入って操るという意味があることから主人公の女の子にこの名前がつけられ、田中は日本語版で彼女をアーヤ・ツール(=操る)と名付けた。

アーヤを演じる平澤宏々路ら、魅力的なキャストたち

主人公のアーヤ役には、『トラさん 僕がネコになったワケ』(19)、『水上のフライト』(20)の平澤宏々路がオーディションで抜擢された。宮崎吾朗監督は「オーディションには、上は20歳くらいから下は11歳くらいまで集まってもらいましたが、大人すぎるとどこか計算高くなってしまい、子どもすぎるとあまりに無邪気になってしまう。その中で宏々路ちゃんは、印象に残る声で、非常に良かった。物怖じしないタイプでもあったので、アーヤにぴったりでした」とコメント。また、魔女のベラ・ヤーガに寺島しのぶ、謎の男・マンドレークに豊川悦司、黒猫のトーマスに濱田岳と、日本を代表する名優たちが競演。寺島と豊川は声優初挑戦ながら、生き生きと、かつ印象的な声の演技を披露した。「皆さん、セリフのないところでもアドリブでキャラクターを表現されていて、素晴らしかったです」と監督も語る。また、主題歌とエンディング・テーマを歌うシェリナ・ムナフがアーヤの母を演じたほか、『千と千尋の神隠し』(01)で主人公・千尋を演じた柊瑠美が『崖の上のポニョ』(08)、『コクリコ坂から』に続き本作では副園長役でジブリ作品に参加している。

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国内外から集結したスタッフ

スタッフには、ジブリ作品に長く関わってきた才能と、若く豊かな才能が、国内外から集結した。ジブリ初のフル3DCG作品ということで、新機軸の体制となっている。脚本には、監督の映画2作品のほか「海がきこえる」(中村香名義/93)、『借りぐらしのアリエッティ』(10)、『思い出のマーニー』(14)も手掛けた丹羽圭子と、郡司絵美。キャラクターデザインには、『天空の城ラピュタ』(86)から原画でジブリ作品に参加し、『魔女の宅急便』(89)でキャラクターデザインと作画監督、『崖の上のポニョ』で作画監督と主題歌作詞も務めた近藤勝也。宮崎吾朗監督作品『コクリコ坂から』「山賊の娘ローニャ」でもキャラクターデザインを務める。CG演出を、ジブリ美術館オリジナル短編アニメーション『毛虫のボロ』(18)にCG作画監督で参加した中村幸憲が担当した。本作は、アニメーション制作スタッフの半数が、フランス、台湾、インドネシア、マレーシア出身のスタッフである。中心となったのは、マレーシア出身の3DCGアニメーター、37歳のタン セリ。タンと宮崎吾朗監督の出会いは、前作「山賊の娘ローニャ」の現場であった。マレーシアで3DCGアニメーションを学び、日本でキャリアを積んできたタンは、アニメーション演出として、制作当初より本作に参加。日本国内で活躍する海外出身のアニメーターや、日本人アニメーターを集め、チームを率いた。タンが活躍したのは、キャラクターを動かすための、骨組や筋肉に相当する仕組み「リグ」の設計。そして立体的な3DCGアニメーションでありながら、手描きアニメ特有の誇張表現や、カメラポジションによって変わるアニメーションを3DCGで実現したことである。監督と、キャラクターデザイン・近藤の思い描く表情や芝居を実現できたのは、タンをはじめとする、アニメーションチームの功績である。「CGのスタッフで僕が知っていたのは、「~ローニャ」を一緒にやったセリさんと『毛虫~』に参加していた中村くんだけで、あとは皆さん初めてでした。これまでにない挑戦で、正直やってみないと分からない賭けみたいなところもありましたが、皆さん素晴らしい仕事をしてくれて期待を上回るものになりました」(宮崎吾朗監督)

音楽はロック。主題歌には本作だけのスペシャルユニットが結成

『アーヤと魔女』を彩る音楽はなんとロック。『ゲド戦記』『コクリコ坂から』「山賊の娘ローニャ」で音楽を担当した武部聡志が、これまでのジブリ作品にない世界観を作り上げている。「ロックと言っても今っぽいロックではなく、イギリスの70年代のグラムロックやプログレです。もともと僕自身が好きなジャンルでしたが、アーヤの母親たち世代にぴったり合っているんですよ。バンドにもこだわって、劇伴の音楽づくりはライブ感を追求してもらいました。武部さんはステージで演奏もする方なので、もともとライブ感を非常に大事にされている。音楽も楽しいものになったと思います」(宮崎吾朗監督)。今回、インドネシアの国民的人気シンガーソングライター・俳優で、日本でも活躍するシェリナ・ムナフをボーカルに迎え、ギター=亀本寛貴(GLIM SPANKY)、ベース=髙野清宗(Mrs. GREEN APPLE)、ドラム=シシド・カフカ、キーボード=武部聡志によるスペシャルユニットを結成。武部と監督がプロデュースを務め、主題歌「Don't disturb me」、エンディング・テーマ「あたしの世界征服」を歌唱・演奏しているのにも注目だ。

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